バランスを取るための鍵―忙しい日常に息抜きを見つける方法

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UnsplashValario Davisが撮影した写真

同じ毎日を送り、家では家事や育児に、会社では仕事に追い込まれ息をつく間も無く、あくせく働き、ふと悲しくなる瞬間がある、という人に送りたい一冊の本と、わたしの体験談。

ドイツの小説家が新聞記者時代に描いた「小さな小さな王様」。

まだベルリンの壁崩壊から間もない1993年に初版刊行された、大人のおときばなしだ。



毎日同じ道を歩き、同じ人々とすれ違い、同じ人々と働き、仕事や生活の重圧に押しつぶされ、ゆううつになっている独り身のサラリーマンを、突然あらわれた子どものように創造豊かで自由な言動をふりまく王様が、何気ない日々をゆさぶる不思議な話。

王様は大人の小指ほどの大きさしかなく、日が経つにつれ、どんどん小さくなっていく。

王様の世界では、大人の状態で生まれ、ベッドの上で目覚める。そして埃や塵ほどまで小さくなり続け、人生の最後には消失するらしい(厳密に言うと誰にも死を確認できないほど小さくなって見えなくなる)。

人間の世界では、できることは少ないけどその代わり想像豊かな幼少期から、知識や知恵ばかり増えて空想にふけることすらできなくなる大人へと成長していく。

主人公はまさにその過渡期にあり、消えゆく想像力を振り絞って、王様を作り出したかのようだ。

王様の存在は、うっとおしいときもあれば、癒されるときもあり、深く考えさせられるときもある。いつか消えてしまうと分かっていても、目の前のことでいっぱいになり王様の相手をしきれず、すでにどこか後悔している。

この存在について、育児されている方々ならわかりすぎるほど、わかるはずだ。

ちなみに我が家にも、ママ(わたし)のことが大好きな女王様がいる。いま現在120cmの身長は、順調に大きくなっている。

わたしも会社員を辞めたくて仕方ないのに、現実を変えられない1人である。
そんな人間たちへ、王様の提案がいくつかあるのだが、まずひとつ試してみた。

現実を夢だと思ってみる。

満員の通勤電車も、会社でのゴタゴタも、面倒臭い仕事も、子どもの癇癪も、すれ違う人に睨まれてる気がしても、

ぜんぶ自分が作り出した夢なんだ。

そう思って一日過ごしてみて感じたのは、
時間の感覚が浦島太郎のようなのだ。

夢の中に時間は存在してるようで、なにもかもめちゃくちゃだ。

遅刻して焦ってる自分とか、掴むのに間に合わなくて何かを失ったとか、そういう事態に起こる夢はあるけど、刻々と過ぎる正確な時間は存在しない。

現実を夢だと思って過ごしてみると、時間を気にし過ぎている自分に気づいた。そして、大してそれは自分には重要じゃないことだということも。

まさに今、会社の休憩時間をオーバーしてるけど、ここ(ブログ)に記述している自分の時間の方が大事である。

で、「夢を作り出してるのは自分」というと、映画『インセプション』を思い出す。

あそこまで複雑じゃないけど、イメージするとこんな感じっていうのをクリストファー・ノーラン監督が描いてくれてる。

あの映画の中では街を折りたたんだりできるが、わたしに今、それはできない。

そこで、お笑いコンビのチョコレートプラネットの「メンタリスト」というコントがあるのだが、リンクしていることを発見したので聞いてほしい笑。

世紀のマジシャンのような出たちで、長部さん扮するSHOGOが必殺技のように『マインドキャッチ!今あなたは、◯◯◯と思いましたね!』と自信たっぷりに松尾さんに質問し、『まあ、…はい。思いました。』と答え、『マインドキャッチ!これがわたしのチカラです。』というやりとりを繰り返す。

SHOGOは『あらゆる人間の頭(思考)をスキャンすることができる』特殊能力を持っている。
舞台に登場して間もないゲストの松尾さんに向かって「あなたはオファーされて、そしてあらゆる手段を使ってここへ辿り着きましたね。」と言い当てる(?)。

「あなたは今から『まぶしっ!ズル!』と言います。」と予言して、ゲストに不意をついてペンライトを目に直当てする。

要は、当たり前じゃん!という相手のリアクションを誘導して言い当てる。ひどい時は、相手が言ったことを後付けして、知ってましたよとばかりに言う。

「すべての思考は、わたしの手の中にある。」

現状でも、そうして当てはめていけば楽しめるんじゃないかと思い立ち、

やってみた。

頭のなかで、ひっそりと。


人にも、鳩にも。

これがどんな効果をもたらしたかというと、
「わたしにはできないことはない」
と見事に勘違いさせられる。

気持ちいいほどに、全ての事象はわたしが仕組んだものだと、総裁になった気分になれる。

あと、どんな結果でも自分が蒔いた種だから怒りに直結しない。

「やっちゃダメ」と「やらなきゃいけない」ことが多すぎて、冒険心を封じ込め、空想する時間を手放してきて大人になる。

自分で選べること、変えられることはいくらでもあるのに、変えない方がラクだとすら思ってしまう。

わたしたち創造性のある生き物として、果たして本当にそれがラクなのか。

ふいに出るため息は、なんなのか。

バカバカしい、ほんのお遊びだけど、王様の提案とメンタリスト法を使って、全然違った一日を過ごすことに成功したことをお伝えしておきたい。

会社帰りの電車の中、座れたという安堵も束の間。隣の人がぐらぐら体をこちら側に揺らし出しても、また一方の人がパーティ帰りで昼下がりから死にゆく細胞の腐敗臭を漂わせていても、はたまた落ち着きのない叔母さんが永遠にガサゴソとバッグの中をまさぐっていても、
この場から立ち上がらず移動しないのは、私が想像主で、すべて分かっているからだ。

そして夕飯をつくり、家族でご飯を食べ終えるまでが夢で、残された自由時間へと現実に戻る。

わたしの場合、19-20Hくらいと、23-7Hの間が現実(睡眠含む)。
それ以外は全部、夢だとする。

いつもなら、ぐったり疲れて帰ってくるが、不思議なもので解放感があり、興味のあったことに自然に引き寄せられる感じがする。

これはたぶん、自分の中の優先順位がクリアになったんだと思う。

皆さんも王様のおすすめ、試してみてはいかがだろうか。

王様のおすすめは他に↓

・空の雲の形をながめて連想ゲームをする。
・すれ違う見知らぬ人を観察して、その人の抱えている人生や企み、気持ちを想像する。
・見たことがない、聞いたことがないだけで、実は毎日通る道では何か事件レベルで面白いことが起きていると想像する。
・目をつむっているあいだは、異世界から何か未確認の生命体が動き回っていると想像する(トイ・ストーリーとか、メン・イン・ブラックみたいに!)
・なりたいものがあるなら、今からでもなれる!なる!と断言してみる。

…いまいちよく分からないという人は、『小さな小さな王様』をぜひ一読あれ。


そして何かやってみるのも、オススメする(ひっそりとね)。












小さな小さな王様
1993年初版発行

著者アクセル・ハッケはSuddeutsche Zeitungのために毎週書いています。THE LITTLE KING DECEMBERを含む彼の本はドイツでベストセラーであり、いくつかの言語に翻訳されています。
挿絵を描いた画家ミヒャエル・ゾーヴァはベルリンに住んでおり、1975年以来絶賛されているフリーランスのアーティストです。

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